シドンのCORONA衛星写真(1967年6月17日撮影)。

「ペレウスの子は早速次の走り競べの賞品を置く。見事な造りの銀製の混酒器で,その容量は6メトロン,手工に秀でたシドン人が丹精こめて仕上げたもので,その美しさは地上あまねく他に比類のない名品であった。フェニキア人たちが朧に霞む大海原を渡って運び,港に船を入れ,トアス王に献上したが,それをイエソンの子エウネオスが,プリアモスの子リュカオンの代価として,勇将パトロクロスに渡したのであった。」(『イリアス』23-740:松平千秋訳,岩波文庫)

古代ギリシアの叙事詩『イリアス』,『オデュッセイア』では,シドン人は活発な海上交易者としてだけでなく,銀器などを作る優れた工芸者としても描かれている。シドンの市街地は,地中海に突き出た楕円状の丘であり,市街地の南北にある港は,海岸線に平行に走る岩礁により波から護られている。《海の城》は,市街地北側の突堤の先端にある。市街地の南北に港を持つ点は,テュロスも同様である。市街地から北東3.8kmのところに,エシュムン神域がある。


CORONA satellite photographs are available from U. S. Geological Survey, EROS Data Center, Sioux Falls, SD, USA.